行政書士試験受験生 Bさん(後編)

第四章 〜行政書士試験苦手の克服〜

 ゆっくりやろうと思った行政書士試験・記述式もあっけなく終了。次は一般教養だ。私はこの一般教養が大変苦手だった。昨年の行政書士試験もこれで足切りを食らった。いくら法令で点を稼いでも、意味がない。バランス良く得点しなければならないのだ。私は特に社会科の力不足を痛感し、これに相当の時間を費やしてきた。新聞を毎日読むのは勿論、気になる記事・用語は切り抜いてノートに貼る。ニュース番組・解説番組を毎日チェックする。この番組を見るときも単に見ているだけではなく、ノートとペンを用意して講義を聴くように真剣に見る。新しい知識は書き残しておくのだ。

 普段の行政書士試験の学習には「知恵蔵」を使用した。あの分厚い本をほとんど全部読み、テーマごとにノートにまとめた。これに時間がかかった。しかし行政書士試験の模擬試験に出題される時事問題はこのノートにほぼ網羅されている。私にとってこのノートは、最後の最後まで非常に重宝した最も大切なノートである。しかし私の社会科の学習は時事が中心であり、歴史についてはほとんどやっていないし、時事の中でも苦手な部分もあった。だがそこは割り切って、それまでに学習してきた部分で特に重要だと思うテーマを20項目選び、更にもう少し深く学習することにした。この中から行政書士試験に多く出題され、非常にラッキーだった面もある。

【試験問題41】漢字:珍問だ。こんな出題形式見たことがない。とにかく国語は半分とればよい、社会科で点を稼ぐ自信がある。そう考えて気軽にやった。「イ」の金子と「エ」の経会が分からない。私の小学校時代の同級生に「金子君」と言う奴がいた。その印象が強くどうしても「カネコ」としか読めない。「金子君」は今ごろ何処でどうしているだろうと要らぬことを考えながら、2にした。

【試験問題42】漢字:私は行政書士試験開始直後、問題全部をパラパラっと一応チェックした。その時、この問42を読解問題と思い違い、読解が増えているとばかりに思い込んでいた。ところがこの問42も次の問43もそうではなかった。内容自体難しくもない。3で決まり。

【試験問題43】敬語:「ウ」と「オ」は明らかに変だが残りが絞り込めない。しばらくここで考え込んでしまったが結局分からない。とりあえず1にした。
 国語ではっきり得点できているのはまだ1問だけ。残り3問中2問をとる。少し不安…。

【試験問題44】並べかえ:イ─オ─エ・・・と続きそうだ。4で決まり。

【試験問題45】空欄補充:ややこしい。丁寧に読んで解いてみる。2かな。

【試験問題46】内容・要旨:文章が長い。このとき私は、早く社会科がやりたくて仕方がなかった。前日からわくわくしていたのもこの社会科を楽しみにしていたのだ。そこへきてこの長文には痺れがきれる。いやいやながら読む。例により3から見てみる。合っているようだ。4、これもよさそうだ。5、これは変な感じ。これにしよう。5で決まり。

 1と2は検討もせず、社会科に進む。これは本来まずい。いくら社会科を早く解きたいとは言え、時間はたっぷりある。全部一応チェックするべきだった。

【試験問題47】行政国家:待ち望んだ社会科は1からじっくりやる。1「司法権の優越化×」 2、正しい。3「財政負担は軽減×」 4「自治体の活動は縮減傾向×」 5「行政権の弱化×」 2で決まり。

【試験問題48】日本史:歴史は知らない。私は並べかえの問題で分からないときは、いつもこうする。「一番右側の中で1つしかないものを、一番先に確定する」この問の場合「ウ」のところに1つしかないのは「満州事変」だから、「満州事変」が先頭にくる選択肢から選ぶ。すると1・3・4が消える。後はいつもの通り下段の5にした。

【試験問題49】高齢化と行政:1「各国で独自なものはないから〜以下×」 2正しい。 3誤り 4「例外的×」 5「市町村がすべての責任を負う体制×」 2で決まり。

【試験問題50】国際組織:本部の所在地など知らない。1・3・5は正しそうだが2・4は全く知らない。特に4のIEAは馴染みがない。4にしておく。

【試験問題51】年金制度:これは私の選んだ20の重要項目にはいっている。はっきり5で決まり。

【試験問題52】財政投融資:これも20の重要項目に入っている。はっきり3で決まり。

【試験問題53】地方交付税:これも重要項目。はっきり5で決まり。

 問48と問50で迷ったものの、それ以外ははっきり答えが出る。実に楽しいし嬉しかったと同時に残りの問題が少なくなってきたことが寂しくもあった。普段の学習でも社会科は楽しかった。「分からないからやらない。やらないから更に分からないんだ」昔、学校の先生が言っていた説教に同感でるようになっている。単に歳をとっただけなのか…。

【試験問題54】企業会計:これも重要事項に選んでいたがピントがずれていた。私が学習してきたのは国際会計基準だった。やられた気がしたが解いてみる。1と5は正しいが、2・3・4が分からない。しかし2「貸倒引当金は〜費用として・・・」ここが気になる。私には会計の知識はほとんどないが、貸倒引当金は貸方科目で負債だったような気がする。この「費用として」が気に入らない。2にしよう。

【試験問題55】金利:日銀の金融政策は一応の学習はしたが私が重点を置いていたのは公定歩合の推移を戦後の景気循環と共に把握するところにあった。とりあえず1からみていく。1、前段は正しいが後段が誤り。2、正しい。3、長期金利の代表は10年物だったと思う。4、為替介入と買いオペは別だと思う。5、有利ではないと思う。2で決まり。

【試験問題56】オンライン申請:電子政府については重要事項として学習したがあまり自信はない。1、窓口提出ではオンライン申請にならない。2、パスワードで本人確認までは無理かな。3、専用回線を全国に張るのは無理。4、認証機関は民間にもある。5、これが正しそうだ。

【試験問題57】不正アクセス禁止法:この法律は以前受けた模擬試験で2回もひっかかってしまった法律で非常に悔しい思いをした経験がある。その後、十分に復習をし、これがもし出題されたら絶対にとってやると意気込んでいた。正にここからの出題。絶対に落とさないと気合が入る。そしてはっきり2が正解と確信できた。

【試験問題58】地震・マグマ:「出た!」と言う感じ。私の選んだ20の重要事項に「地震・火山」という項目が入れてあった。毎週日曜日の新聞にその週の出来事をまとめた記事がある。私はそれを切りとってクリップでまとめている。それを古い順に読んでいくと最近の主な出来事が時系列で把握できる。古新聞は捨てずに全部日付順に並べて保管し気になる記事は何時でも読めるようにしている。その週間出来事を読んでいると「地震」に関する記事が目に付いた。「火山」についてはオマケ程度にしか学習していないが「地震」については「知恵蔵」できっちり学習した。(つもりだった)実際この問58の設問では正答にはいたらなかった。「火山岩の斑状組織」「SiO2の含有量」など全く知らないので、1・2・3の地震に関する選択肢の中から選ぶ事
にした。惨敗。

 問58のような理系っぽい問題を時事問題に含めるのかどうかは別として、私の社会科の学習方法はまず政治・経済の基本を押さえ、週間記事で時の流れを把握し、まとめたノートでその経緯や問題点等を知っておくというものである。その中で分からない用語があれば時事用語としておさえておく。ベースになる基礎を創ってその上に知識を積み上げ、立体的に把握するよう心がけた。更に重点項目を中心に知識を深めることにした。建物に例えるなら先のとがったビルのようなものだろうか。しかしあまり高く細長いものにする必要はないと思う。低くてもどっしりとしたもののほうがいいかも知れない。

 私は昨年の行政書士試験の社会科で正答できたのは、たったの3問だった。しかもすべてまぐれ当たりである。行政書士試験の問題文を読んでも何のことだかさっぱり分からなかった。こんな無知な男でもやればなんとかなるものだ。当初行政書士試験の社会科の勉強を始めるにあたって、どこから手をつけてよいかすら分からなかった。そこで私が考えたことは、民法の条文形式をヒントに社会科の学習範囲をテーマ毎に分類し目次のようなものを作ってみようと思った。民法は「総則」「物権」「債権」・・・と、まず大きな分類があり、更にそれぞれの中でも小さい項目に分かれている。これを真似てみた。法令科目の学習では必ず六法の目次をノートに書き写して、今何処を学習しているのかを見失わないように、また、法全体を体系的に捉えるように心がけていた。

 これを社会科でも同じように、「政治」「経済」「社会」とまず大分類し、更にそれぞれを細分化して一つの目次のようなものができあがったのだ。少々おかしな分類でも構わない。誰かに発表する訳でもないし、後からいくらでも修正できる。要は自分の学習範囲を決めて、今何処を勉強しているのか、何処まで進んでいるのかが自分に分かればそれで十分。後はこの目次の通りに学習を進めていけばよい。

 私はこうして今年の行政書士試験で社会科を克服した。自分の成果を自慢するつもりは毛頭ないが、これから行政書士試験の学習を始められる方々で社会科に不安を持っておられる方に少しでも参考になればと思う。社会科の学習は私達から遠い無縁のことではなく、比較的身近な問題が学習のテーマになる。やりかけると非常に楽しい。これが私の率直な感想だ。これからも少しずつ続けたいと思っている。

【試験問題59】算数:数学の問題は特に準備をしていない。出ても一問だと決めつけていた。ところが2問もある。一瞬どうしようかと思ったが、解いてみると算数だ。4で決まり。

【試験問題60】算数:これも単純な計算で答えがでた。5で決まり。

 これで一通り解き終えた。時計は3時10分ごろだった。パスした問4マークシートを適当に埋める。とりあえず問1からマークシートへの記入ミスがないかチェックしていく。いきなり問1で間違えていた。1にマークしている。消しゴムできれいに消して5に書き直す。全部のチェックを終えて、終了時刻を待った。すっかり忘れていたニコチンガムを噛みなおす。早く帰りたい。終了5分前。もう一度、名前と受験番号を確認する。3時30分行政書士試験終了。


第五章 〜行政書士試験本番〜

 係員の方が解答用紙を後ろから順に回収する。行政書士試験の模擬試験程ではないが十分に得点できたと思う。机の上を片付けて帰る準備をした。まだ何か係員の方がマイクでしゃべっているが席を発った。教室を出ると既に通路も階段も受験者で一杯になっていた。人ごみにもまれながらも漸く外に出た。そこから私は走る。早く帰って行政書士試験の解答速報が見たかったし、行政書士試験が終わって何だか嬉しかった。何処まで走っても受験者の人並みが続く。改めて行政書士受験者の多さを実感した。

 正門のところでは予備校のパンフレット配りの人達がいた。渡されるままに受けとって友人の車を探した。約束の場所で車に乗り込だ。・・・・・・ここでやっとほっとした。本当にほっとした。帰りの車内では行政書士試験の感想を彼に延々と聴いてもらった。行政書士試験には無縁の彼だが最後まで聴いてくれた。実にいい奴だ。ジャイアンの言葉を借りるなら「心の友よ」と言いたい。

 行政書士試験問題60問の中には「@絶対に落としてはならない基本問題」「A何とか得点し合格ラインを目指す問題」「B捨て問題」と大きく3つに分けることができる。これを問題を解きながら判断していく。全問正解する必要は全くない。B捨て問題は人によって個人差がでるかも知れないが、あまり多いとまずい。しかし@の力が十分にあればAの力が付いてくるし、Bの力にも結びついてくると思う。そして@ABの判断が行政書士試験問題を解きながらできるようになりBにぶつかったとき、いつまでも悩むことなく次の問題に進むことができるようになるのではないか。見切りをつけることも重要だと思った。

 私がこれまで行政書士試験のために進めてきた数々の準備の目的は、結局「150分で60問を解く」というところに辿り着く。その結果として行政書士試験に合格できれば尚よい。前に紹介したイチローのコメント「結果も大事だが、そのプロセスの方が重要。試合で結果を出すための準備を怠ったことはない」が、私にとって全ての基礎になり大きな影響があったと思う。行政書士試験の受験を通して私が感じたとこは、法令や教養の知識は勿論重要だが、「150分で60問を解く」ための作戦と戦術も重要だと思った。

 自宅に帰って友人と共に早速「解答速報」で答え合わせをすることにした。先ず、いつも利用している予備校のHPへ行く。1問1問慎重に照合していく。ひと通り合わせ終え別の予備校も見てみる。先の予備校と違う解答がある。もうひとつ別の予備校も見てみる。色々と解答が割れているようだ。友人と相談して解答が割れている問は失点として得点を計算してみることにした。それでも足切りクリアで7割以上ある。まず大丈夫そうだ。

 これまで、本当に多くの方々にお世話になった。本当に感謝している。更に、迷惑もかけ、心配もかけてきた。その分これから精一杯その人達のためにも、また社会のためにも、がんばらなければならない。その意味で、これからが「本番」だと思う。

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